海外から戻って「自分はどういう看護師になりたいのか」を見つめ直した結果、自分はお婆ちゃん子だったので、お年寄りが自然に過ごせるケアがしたいのだと。そこで「治療」よりも「支える」看護師を目指すことに決め、24時間体制で医療もきちんとやっている施設を探してしまに入りました。 ここはホームの方針「家にいるように過ごしていただく」が本当に生きているホームです。施設の集団生活の中で、ご入居者様のご要望をどこまで叶えられるか、というのを日々スタッフ全員で話し合っています。先日も酸素装着で身体もつらい方が「どうしても食堂でみんなと一緒に食べたい」と。ご本人はやはり誰かと一緒に食べるほうが美味しいし、食堂に坐ることで気持ちがしっかりするのだと思います。ですがそのためには時間もかかります。起きて、洗顔して、という一連の流れが長いですしその間介助も必要です。この方だけに時間をかけると他の方を見て差し上げられない。けれど全員で話し合い「きっとこれはこの方にはとても大事なことだから」と調整に調整を重ね、何とか実現に漕ぎ着けました。
私がご入居者様に対して心がけていることはまず「清潔を保つ」こと。それと「愛情」です。「愛情」とはまず、「お話をしっかり聞くこと」。ちょっとした症状もお話を聞いて差し上げれば落ち着くことが多いんです。ご入居者様が納得できるようにお気持ちをこちらがキャッチし包み込むことで安心なさいます。 また、訴えてこない、またはこられない方については、とにかく声かけやスキンシップでどうにかして「その方の気持ちを読み取る」努力をしています。それと「どんなことも見逃さない」こと。ご飯の進みが遅い。ややむせが強い。起床が遅れている。そんなちょっとしたことを看護師も介護士もシグナルとして絶対見逃さない。これが私たち専門職の「愛情」なのだと思います。 医療依存度の高い方が多いこのホームでは、自立型ホームが謳うような「もっとイキイキ」とか「もっとアクティブに」を目指すにはたぶん限界があります。私たちのケアの役割とは、今お住まいの方が日々穏やかに、心地良く、そして楽しく長く過ごせるように健康と暮らしをサポートすることだと思っています。
私たち看護師もそうですが、介護士さんたちはさらに時間に追われています。それでうちは介護士看護師の別なくお互い手伝い合うのですが、うちの介護士の目の届き方は本当にすごい。自分も負けずに頑張ろうと思いますね。うちは認知症が進んでいる方が少なくないので名前をなかなか覚えていただけないのですが、先輩方の中にはご入居者様から「○○さん○○さん」と慕われている方もいて、学ぶところが多いです。私も、名前は覚えていただけないのですが、行くと顔がちゃんとわかって反応してくださったり、私だけに言葉をかけてくださったり。小さなことではありますが、本当に嬉しい。これが励みになって、もっと頑張ろうと思えます。